次世代半導体 炭化ケイ素(SiC)

現在使⽤されている半導体材料の⼤部分はシリコン(Si)ですが、近年シリコンは性能限界を迎えつつあります。これを受け、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga203)といった「次世代パワー半導体材料」が 2000 年始めから世界中で急速に研究開発が進められ、⼀部実⽤化に⾄っています。左図(スマホは上図)に⽰すように次世代パワー半導体材料はシリコンと⽐較して数百倍以上の理論性能を有し、これら半導体材料でパワー半導体を作製すると、その電⼒ロスを⼤幅に削減できるため注⽬されています。既に炭化ケイ素を使ったパワー半導体は電⾞や新幹線のモーターを駆動するために使⽤されており、今後も普及が進むと予想されています。

SiC埋込ゲート静電誘導トランジスタ(SiC-BGSIT)

埋込ゲート静電誘導トランジスタ(buried gate static induction transistor : BGSIT)は、左図(スマホは上図)のようにソース層の下に高濃度p領域(p+領域)が埋め込まれた構造です。またSIT構造は元々チャネル長を短く設計するためオン抵抗を低くすることが可能な素子です。山梨大学矢野研究室ではSiC材料を用いた、ノーマリーオン型およびノーマリーオフ型の両方の静電誘導トランジスタ(SiC-BGSIT)を産業技術総合研究所と共同開発しました。

SiC静電誘導トランジスタカスコード素子

開発したBGSiC-SITとSi-MOSFETを用いた「SiC静電誘導トランジスタカスコードトランジスタ(SiC-BGSITカスコード)(左図、スマホは上図)」を新たに開発しました。SiC-BGSITカスコードは、高耐圧のSiC-BGSITと低耐圧のSi-MOSFETをカスコード接続し、両者を一体化し一つのトランジスタとしたものです。これによりMOSゲート駆動で、SiC-BGSITとSi-MOSFETの両者の利点を生かした性能が可能となります。またインバータ回路など電力変換器に搭載するトランジスタとして重要となる、逆導通特性も有しています。

SiC-BGSITカスコードを搭載した電力変換回路の開発

更に当研究室では、SiC-BGSITカスコード素子を搭載したハーフブリッジインバータ回路を試作し、電力変換効率などの性能を評価しています。左図(スマホは上図)は試作した回路の出力(負荷)の電流・電圧波形です。